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現状と問題点・保全への取り組み

雨竜沼湿原が一般登山者にその門戸を開いてから既に40年以上が経過し、現在、年間約2万人が短いシーズンに訪れるようになりました。国定公園への指定や継続するアウトドアブームを考慮すると、さらに登山者の数は増えていてもおかしくはありません。

この程度の入込み数で収まっている原因として、まずアプローチの交通の不便さを取り上げることができます。さらに、登山シーズンが非常に限定されるという点も重要です。加えて、少なくとも往復3時間程度は登山しなければならない体力的条件と、天候に左右されるということも大きな要因と考えられるでしょう。

登山者に踏み付けられ裸地化した池塘周辺の様子

登山者に踏み付けられ裸地化した池塘周辺の様子

地元雨竜町が環境保全に努め、無意味な開発に手を染めずに来たことも今日の雨竜沼湿原の優れた保全状態に貢献している大きな要因です。いずれにしても、雨竜沼湿原は自らの立地条件のゆえに、今日に至るまで良好な保存状態を維持して来たという事実は否めません。

しかしその自浄効果も、近年伝えられる地球温暖化現象等の外的要因に相殺され、将来的に様々な湿原環境の変化が危惧されています。

●現在指摘されている問題点

  • 登山者の踏みつけによる湿原植生の荒廃・裸地化
  • 木道敷設部分の植生変化
  • 登山者により運ばれる非湿原植物の侵入
  • 池塘の枯渇・水漏れ
  • 湿原周辺からのチシマザザ、ミヤマヤナギ等の侵入
  • 木道の集熱効果による乾燥・蒸発促進
  • シーズン最盛期に見られる登山口や木道での混雑
  • 大型観光バス乗入による登山口・道路での交通障害
  • 木道等の湿原内敷設工事による湿原へのダメージ

これらの問題の全てが人為的な作用により引き起こされている訳ではありません。前述の地球温暖化現象や湿原への水供給のバランスを崩壊させる天変地異の方が短期間に湿原環境を破壊する外的要因と成り得ます。そうした湿原の存在を脅かす外的要因を、人為的な破壊作用が促進する形で湿原に影響を及ぼしていると判断できます。

特に、木道敷設部に見られる湿原植生の変異や登山道から流出した土砂が原因となりミネヤナギが湿原内に繁茂していることなどは以前から指摘されています。

木道に特定植物が繁茂している様子

木道に特定植物が繁茂している様子

短い登山シーズンの7,8月の週末にのみ登山者が集中するという利用形態も考慮すべき問題と言えるでしょう。バスによる団体ツアーの増加やシーズン最盛期の登山口駐車場や木道での混雑など、短期間とはいえ利用者の自然体験の質が損なわれる心配も指摘されます。

7月の最盛期に登山口で混み合う駐車場の様子

7月の最盛期に登山口で混み合う駐車場の様子

幸いな事に、現在人為的な湿原環境に及ぼす影響は非常に限られた部分にのみ見られています。しかし、こうした問題が拡大しないよう、より賢明な方策を模索・実施して行くことが必要です。いずれにしても、現状のままの湿原利用のスタイルを維持し続けることが、湿原の将来にどのような影響を及ぼすのか科学的にシミュレーションすることが必要です。

人為的な関与の有無に拘わらず、湿原という自然環境は湿性遷移による自然変遷を経ることになります。雨竜沼湿原もいずれは湿原から草地、さらには林相帯へと移り変わっていくことが予想できます。しかし、湿原が本来持つ寿命を人為的な影響で縮めてしまうことは大変残念なことで、あってはならないはずです。雨竜沼湿原は北海道遺産登録やラムサール条約における登録湿地として、世界にその資質が認められた湿原です。この湿原を未来に守り伝えるために、努力したいものです。